ECMWF Roberto Buizza訪問

ECMWF(欧州中期予報センター)予測可能性研究部門長Roberto Buizza博士が来訪し,セミナーをしていただきました。夏季一斉休業中でしたが,当研究分野のメンバーを中心とした所内の参加者のほか,物理気候や理研AICSからも出席していただきました。ご講演の表題は,Estimating uncertainty with the ECMWF ensembles(ECMWFのアンサンブルを用いた不確実性の推定)でした。

講演では,まず世界一精度が高いとされる水平解像度15 kmのECMWFの数値天気予報モデルでも気温の予測が外れた事例を示し,アンサンブル予報の有用性について議論しました。次に,ニューヨークで豪雨が予測されていながら実際はあまり降らなかった北米での低気圧の事例を取り上げました。誤差は時間とともに成長するため,週間予報のような中期予報において有用とされていますが,1〜3日程度の予測でもアンサンブル予報が有用であることを示しました。

続いてECMWFのアンサンブル予報システムを紹介し,アンサンブル予報の検証について議論しました。さらに,MJO(マッデン・ジュリアン振動,熱帯の30〜60日規模の振動)や熱帯低気圧を例に1か月予測,エルニーニョに関連した気温や降水を例に数ヶ月予測においてアンサンブル予報から得られる情報や改善すべき点について議論しました。

最後にアンサブルデータ同化(EDA)について紹介し,今後の方向性について議論しました。ECMWFのモデルは,気象庁やアメリカのNCEP同様にスペクトル変換法を用いています。スペクトル変換法では,球面調和函数と呼ばれる球面状の波を使って水平離散化をしています。伝統的なオイラー移流では,格子数は切断波数の約3倍(2次格子),現在用いられているセミラグランジュ移流では2倍(線型格子)となっていて,非線型の移流項が一見現れない後者の方が少なくなっています。ECMWFでは,高次の非線型性に対応するためにむしろ格子数を増やすべきだと判断して,切断波数の4倍として間引きを工夫する3次八面体格子(CO)を導入するとのことです。またEDAの解像度をTL399からTCO639に増強して,台風の中心付近の場の解析精度向上を図るとのことです。