イタリア・ラクイラでのサマースクール

榎本准教授がイタリア共和国ラクイラで開催された国際サマースクールに参加しました。International Summer on Atmospheric and Oceanic Sciences(国際大気海洋科学サマースクール)と名付けられたこのサマースクール,2000年から始まり,今回が14回目とのことです。 今回のテーマは,「地球システム科学のための高度プログラミング手法」でした。並列計算や最適化,メニーコア及びGPUの利用,高性能計算のための仮想化,ウェブ技術を応用した分散データ処理などを学びました。また,榎本准教授はルジャンドル陪函数の高精度計算手法に関するポスター発表を行いました。聴衆のうち,米国海軍の気象関係者はスペクトルモデルの高解像度化に携わっており,榎本准教授の手法が参考になると喜んでいました。

ラクイラの様子

2016年8月24日にもイタリア中部で大きな地震がありましたが,2009年4月6日に発生したマグニチュード6.3の地震でラクイラは大きな被害を受けました。7年間以上経過した現在でも旧市街ではあまり復旧・復興が進んでいません。石造りの建物の多くは倒壊を防ぐ補強が施され,多くの通りは通行ができません。各国政府の協力で少しずつ復旧が行われており,昼間は工事関係者が多数働いています。中心部の店の多くは空いていませんが,カフェやレストラン,バーは営業しており,夜は賑わっていました。インフラの復旧も課題であるとのことです。私は地震や建物が専門ではないので,きちんとした調査ではないことをご了承下さい。

鉄骨で補強された建物

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近代的な建物も被害を受けている。

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内部修理中のサンタ・マリア・ディ・コレマッジョ大聖堂(Basilica di Santa Maria di Collemaggio)と修繕が終わり内部の見学ができるサン・ベルナルディーノ大聖堂(Basilica di San Bernardino)

 

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スペイン城砦(Forte Spagnolo)と2012年11月に復旧工事が完了したナポリ門(Porta Napoli)

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城壁の外は復旧し人がたくさん暮らしているが,内側では壊れて放置されている建物も多い。

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榎本准教授のルジャンドル陪函数の計算手法に関する論文

榎本准教授のルジャンドル陪函数の計算手法に関する論文がSOLAに掲載されました。

解説

地球大気の全球シミュレーションには,大気大循環モデルと呼ばれるコンピュータプログラムが利用されます。地球大気の流れが従う物理法則は偏微分方程式で記述されていますが,コンピュータプログラムでは時空間に飛び飛びの値で計算する形式への書き直し(離散化)が必要です。水平方向の離散化では,球面上に格子を配置するとともに,大気の流れを様々な空間スケールの波で表現することができます。球面調和函数は,球面上の波を表現するための函数で三角函数とルジャンドル陪函数との積で表現されます。

計算機性能の向上に伴って,細かい構造を表現するために高次高階のルジャンドル陪函数が利用されるようになりました。例えば,水平方向に10 kmの解像度を得るためには1279までの波数(切断波数)の波が利用されます。ルジャンドル陪函数を3点漸化式で計算した場合,切断波数が1700を超えるとルジャンドル陪函数の値が倍精度の範囲内では不正確になり格子点での値と波の振幅との変換がうまくいかなくなります。榎本准教授は,この問題を解決するために,4点漸化式を用いることが有効であることを示しました(Enomoto et al. 2008)。他方,Fukushima (2011)は,拡張浮動小数点数を用いて3点漸化式でも高次高階のルジャンドル陪函数が計算できることを示しました。

今回の論文では,切断波数が10000を超える場合に4点漸化式を用いた手法に生ずる新たな問題の解決方法を示すとともに,改良された4点漸化式を用いた手法と拡張浮動小数点数を用いた3点漸化式とを比較しています。その結果,改良された4点漸化式を用いた手法は精度の点で,拡張浮動小数点数を用いた3点漸化式は速度の点で有利であることが分かりました。この研究の成果は,精度の良い高解像度大気大循環モデルの開発の鍵となると考えています。

関連論文

謝辞

本研究はJSPS科研費 15K13417の助成を受けたものです。