応用気象学IB
はじめに

First of all he said to himself: “That buzzing-noise means something. You don’t get a buzzing-noise like that, just buzzing and buzzing, without its meaning something. If there’s a buzzing-noise, somebody’s making a buzzing-noise, and the only reason for making a buzzing-noise that I know of is because you’re a bee.”
Then he thought another long time, and said: “And the only reason for being a bee that I know of is making honey.”
And then he got up, and said: “And the only reason for making honey is so as I can eat it.” So he began to climb the tree.
Winnie-the-Pooh (Milne 1926)
真理に近づく方法として、科学では演繹(deduction)法と帰納(induction)法がある。 演繹は、南宋の儒学者朱熹による中庸への注釈、中庸章句にある「更互演繹,作為此書」に由来し、前提から論理を展開し結論を導き出す。 気象学では、支配方程式に基づく気象力学や、それをコンピュータのプログラムとして書き起こしたモデルによるシミュレーションは演繹である。 一方、帰納法は事実を積み重ねて一般的な法則を導き出す。 気象学では、観測的研究や、データ解析が該当するだろう。
データ同化は、演繹と帰納を組み合わせた研究手法である。 通常モデルにより第一推定値を演繹的に得る。 統計的推論を基礎として観測によりモデルを修正する。 数値天気予報の初期値を作成するという必要から研究が進んだため、単なる技術と認識され、予報精度を高める初期値が探求されてきた。 しかし、研究手法の観点からは、力学及びモデル並びに観測及び解析の両方を利用した、真理を探究するためアプローチであると言える。
データ同化が基礎とする学術分野は、解析学(変分法)、関数解析学、線型代数学、統計学、最適化理論、非線型力学(カオス理論)、制御理論、情報理論など多岐に亙る。
本講義では、以下のようなデータ同化に関連した話題を取り上げる。
- 統計的推定: 最初二乗法、最尤推定
- 数値最適化: 最急降下法、ニュートン法、共軛勾配法
- 変分法: 随伴モデル、4DVar
- アンサンブルカルマンフィルタ: EAKF、DEnKF、インフレーション、局所化
- 感度解析: 随伴、特異ベクトル、アンサンブル
- 機械学習: ニューラルネットワーク、SOM、カーネル法
- 数学的補遺: 様々な行列、行列の微分、行列の分解
描画や簡単な計算には、Rを用いている。 一部のコードはPythonとFortranに翻訳して、リポジトリに置いてある。
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