メディケーン

投稿者: | 2023年9月16日

メディケーンは、地中海で発生する小低気圧で、発達して地中海沿岸に強風や大雨をもたらすことがあります。熱帯低気圧に似た特徴を持つことから、地中海のハリケーンという意味で、メディテラニアンとハリケーンをつなげてメディケーンと呼ばれています。

メディケーンは気象衛星から見ると、熱帯低気圧のように眼を持ち渦巻状の雲を伴っているのが特徴です。メディケーンの報告が増えるのは、気象衛星が一般的になった1980年代からです。1000 km程度の半径を持つことがある熱帯低気圧と比べると、メディケーンの半径は小さく数百km程度です。

熱帯低気圧は暖かい海の上で夏から秋に多く発生しますが、メディケーンは比較的冷たい海の上でも発生し、秋から冬に多く見られます。メディケーンがなぜ冷たい海の上でも発生するのかはよく分かっていません。

メディケーンは地中海西部で多く発生します。シエルゾやトラモンタンといった局地的な風との関係が指摘されています。また、シチリア島とギリシャの間にあるイオニア海でも多く発生します。

熱帯低気圧は中心に暖かい空気があるのが特徴です。中心付近の暖かい空気を暖気核と呼んでいます。
メディケーンは暖気核を持つこともありますが、そうでないこともあります。メディケーンの多くは上空の気圧の谷をきっかけとして発生しますが、地中海から熱や水蒸気をもらって発達することもあり、詳しいことはよく分かっていません。

2020年メディケーンIanosがイオニア海で発生し、最大風速54m/sを記録、ギリシャを中心に大雨がもたらされました。2021年には、メディケーンApolloがシチリア島で一日に300ミリ、二日で400ミリの雨が降り、シチリア、マルタ、アルジェリア、チュニジアなどに大きな災害をもたらしました。2023年にはメイディケーンDanielによる雨によりリビアで洪水が引き起こされたとされています。Apolloは最盛期に熱帯低気圧のような暖気核が見られました。

メディケーンの名前はヨーロッパの気象局が個別につけています。台風のように決まった付け方はなく、国により呼び名が違うこともあります。

参考文献

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  • Miglietta, M. M., and R. Rotunno, 2019: Development mechanisms for Mediterranean tropical-like cyclones (medicanes). Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 145, 1444–1460, doi:10.1002/qj.3503.
  • Miglietta, M. M., D. Carnevale, V. Levizzani, and R. Rotunno, 2021: Role of moist and dry air advection in the development of Mediterranean tropical-like cyclones (medicanes). Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 147, 876–899, doi]10.1002/qj.3951.