小川さんと吉田准教授、根田昌典理学研究科特定教授による、温帯低気圧の初期環境場に関する論文がSOLAに掲載されました。
Ogawa, T., A. Kuwano-Yoshida, and M. Konda, 2025: Environmental conditions in the early stage of cold- season cyclones formed in the west of Japanese Islands. SOLA, 21, 475−482, doi:10.2151/sola.2025-057.
温帯低気圧は、中緯度に住む我々にとって非常に身近な存在です。「三寒四温」のような日々の天気の変化を生み出すだけでなく、時に強く発達し、暴風や大雪などの災害をもたらすこともあります。
これまで多くの研究では、低気圧が急発達するときの低気圧の構造や周囲の大気・海洋の状況(環境場)が調べられてきました。一方で、低気圧が発生した直後の環境場は十分に理解されていませんでした。そこで本研究では、過去20年間に日本の西方で発生した低気圧を対象に、低気圧の発生直後の環境場と、その後の強さとの関係を統計的に調べました。
過去の大気の状態を再現したデータ(再解析データ)から低気圧を抽出し、ピーク時の強さをもとに「強い低気圧」と「弱い低気圧」に分類しました。それらが発生した時刻まで遡って環境場を比較すると、強い低気圧は、東側の高気圧の縁に沿った南風による、暖かく湿った環境場で発生していたことがわかりました。また、東側の高気圧は、上空の気圧の谷によって維持されていました。
さらに、「強い低気圧」の中でも特に強くなった低気圧が発生した環境場の特徴を調べるために、統計的な分析(回帰分析)を行いました。その結果、より強くなる低気圧ほど、発生直後に北西側から強い寒気が流れ込んでおり、低気圧周辺の気温差が大きくなっていたこと、また、上空の偏西風が局所的に速く流れていたことがわかりました。速い偏西風は、その北東側で上昇気流を強化することが知られています。したがって、「強い低気圧」がもともと持っている暖かく湿った空気を、速い偏西風にともなう上昇気流が吸い上げることで、低気圧をますます強めると考えられます。
これらの結果はあくまで統計的に得られた関係であり、低気圧の予測に直結するものではありません。しかしながら、低気圧の「生まれ」の違いが、その後の発達の違いにつながる可能性を示しており、発達メカニズムの理解や予測の解釈に役立つことが期待されます。

