気象研究所台風研究部コロキウム

投稿者: | 2014年3月3日

宮地さんが気象研究所台風研究部コロキウムで台風の進路予測に関する修士論文について発表しました。 山口宗彦研究官他気象研究所の皆さんにお世話になりました。ありがとうございました。

Title: NCEP-GFSを用いた複数解析値からの台風進路予報実験

Presenter: 宮地哲朗・榎本剛(京大防災研)

Abstract: NCEPの全球予報モデルGlobal Forecast System(GFS)を用いて、NCEP、ECMWF、気象庁の解析値を初期値とした 進路予報実験を行い、進路予報誤差が初期値の違いとモデルの違いによりどのような影響を受けるのかを調べた。

2009年に北西太平洋で発生した22個の熱帯低気圧の平均進路予報誤差は、NCEP初期値の場合に比べ、 ECMWF初期値を用いた場合は改善し、気象庁初期値を用いた場合は悪化した。

台風第20号Lupitの北への転向の予測は、初期値の交換により予測が大きく改善し、初期値の再現性が重要である ことが分かった。この結果は、気象庁のモデルを用いたYamaguchi et al.(2012)の結果と一致する。 Yamaguchi et al.(2012)で予報モデルの重要性が指摘されていた台風第17号Parmaの事例では、 気象庁予測に見られた北進バイアスは、気象庁初期値を用いたGFSによる予測では減少し、予報モデルの違いによる 改善が見られた。しかし、NCEP初期値では見られない北進バイアスが依然残っており、初期値の違いの影響も示唆された。

最後に、初期値の渦成分と環境場成分を互いに入れ替える実験を行い、初期渦の違いが予測誤差に与える影響を調べた。 Parmaの事例では、初期渦の鉛直構造に違いが見られたが、予測進路は環境場成分として用いた初期値の結果とほぼ同じ進路となり、初期環境場の再現性が重要な事例であったと考えられる。